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【高校物理】熱力学が苦手な人はまずこの考え方だけ理解しよう!



学習塾ESCA茗荷谷校の講師、真鍋です。本稿では、物理の勉強法について特に熱力学分野の大事な考え方についてまとめていきたいと思います!

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まずは物理の基本的な性質を理解しよう


前回の記事(学習塾ESCA物理講師が高校物理の解き方のコツ、伝授します!)では、物理科目における全般的な考え方や、特に力学分野での考え方について紹介させていただきました。

物理は、大学受験の教科の中で、その理論が最もよく体系的に整理されている教科であります。いくつかの原理が与えられそこからさまざまな公式が導き出されている、ということをきちんと理解できれば、公式の意味などについて悩むこともなく、スムーズに公式の意味するところを理解できるようになります。

実際の問題にそれらの公式を当てはめるのにはそのための訓練が必要になりますが、自分の中で理論の全体像を整理できているのといないのとでは、その際の理解度も大きく変わってくるでしょう。

 

熱と温度の関係を理解しよう


では、熱力学の分野について原則となる考え方、法則について紹介させていただきます。熱力学は、その名の通り熱に関わる問題を扱う分野です。

では、熱とはいったい何なのでしょうか?例えば、線香の煙が揺れ動くように運動するブラウン運動は、空気中の分子が不規則な運動をし、煙の微粒子に衝突するために生じます。

このように、一般に物質を構成している個々の分子や原子は不規則な運動をしており、この運動のことを熱運動と呼びます。そして、熱運動の激しさを表しているのが温度であり、単位はK(ケルビン)です。

温度が高いほど熱運動が激しく、反対に絶対零度では熱運動は完全に停止します。熱とはエネルギーの一つの形態であり、その単位は仕事やエネルギーと同じ単位であるJ(ジュール)が用いられます。

温度の低い物体にエネルギーである熱を与えると熱運動が活性化し、温度が上昇します。この時、与えた熱の量と温度の上昇量は物体ごとに異なっており、この関係を数値化したものが比熱cです。

比熱cを用いると、物体が[K]だけ温度変化した際に与えられた熱量Qは、物体の質量m[g]を用いて、

$$Q = mcΔT$$


と表されます。これはつまり、同じ重さの同じ物体は、与えた熱量に比例して温度変化することを表しています。

これが熱力学を考えるうえで基本となる、熱と温度の関係です。熱とはエネルギーの形態の一つであり、温度とは物質の熱運動の激しさを表す物理量です。

そして、物体に熱を与えることで熱運動の激しさが増し、結果的に物体の温度が上昇するということが理解できたのではないでしょうか。

 

理想気体の法則を理解しよう


続いて、熱力学の中で気体の状態について考えるために重要になる法則について説明します。気体の問題を考えるうえで最も重要な式は、理想気体の状態方程式と呼ばれるものであり、

$$pV = nRT$$


と表されます。ここで、pは気体の圧力であり単位はPa(パスカル)、Vは気体の体積で、nは気体の物質量(モル数)、Tは絶対温度、Rは比例定数である気体定数です。

気体の問題を考える際は、まずこの公式にどう当てはめるかを考えるのが重要になりますが、この式自体はいったいどのような意味なのでしょうか。

気体の物質量と温度が一定、つまり気体を容器の中に密閉して出入りがないようにし、温度変化がないようにした場合を考えます。

その際、上の式は「pV = 一定」の関係を表します。

これは、体積を半分にすると圧力は2倍に、反対に体積を2倍にすると圧力は半分になることを意味します。

例えば空気の入ったビニール袋を押しつぶすと圧力でパンパンになる、というような事象から、直感的に理解することができるでしょう。

次に、同じように気体の出入りはないようにしたまま(つまりnは一定)温度を変化させることを考えます。

この場合「pV/T = 一定」の関係が成り立ちます。

この式は、温度と先ほど見たpV(圧力と体積の積)が比例することを示します。例えば、体積が一定の時に温度を2倍にすると圧力は2倍になります。

温度とは、熱運動の激しさを表す物理量であり、圧力とは気体分子が壁にぶつかって与える力を表しているので、この関係も直感的に理解することができるでしょう。

そして、気体の物質量が2倍つまり、入っている気体が2倍になれば、pVの値もそれに比例して増加することも自然に納得できます。

これらの関係を一つの式にまとめたのが上で示した理想気体の状態方程式であり、気体問題を解く際にはこの公式がすべての基本となります。

 

熱力学第一法則を理解しよう


最も重要な法則である熱力学第一法則について理解するために、気体の内部エネルギーについて説明します。

気体とは気体分子の集合であり、これらの分子はそれぞれ熱運動による運動エネルギーと分子間の相互作用による位置エネルギーを持っています。

そのすべてのエネルギーの合計を気体の内部エネルギーと呼び、単原子分子理想気体の場合は、

$$U = \frac{4}{3}nRT$$


の関係が成り立ちます。これはつまり、気体の内部エネルギーは温度に比例することを示しており、温度が熱運動の激しさを表す物理量であることを考えると理解しやすいと思います。

熱力学第一法則とは、この内部エネルギーの増減についての法則で、

ΔU = Q吸収 + Wされた


と書くことができます。意味としては、気体の内部エネルギーは気体が吸収した熱と気体がされた仕事だけ増加するという意味になります。

内部エネルギー、熱、仕事はすべて単位がJ(ジュール)でありエネルギーの次元の物理量であることを考えると、至極当然のことを言っているとも考えられます。

注意点としては、問題などでは放出した熱量や気体が外部に対してした仕事に関して情報が与えられることがあり、これらの場合には符号が逆になることに注意する必要があります。

 

まとめ


以上、熱力学分野の考え方として、熱とは一体何かから、理想気体の状態方程式、熱力学第一法則についてその意味を簡単に説明させていただきました。

これらの意味を知ったからと言ってすぐに問題が解けるようになるわけでありませんが、大げさに言うと熱力学分野の気体に関する問題はすべて上の2つの式だけで解くことができるものであり、これらの意味を正確に理解することは非常に重要です。

逆に言うと、これらの公式がまだ頭に入っていない人は、熱力学の分野で点数を取ることは不可能です。

字数の関係もあり必ずしもわかりやすい説明ではなかったかと思いますが、教科書などを参考にしつつ、公式の意味を理解するという視点で物理の勉強を進めていただくと、自分の中で理論が整理されるのではないかと思いますので、参考にしていただければ幸いです。

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